住まいの文化賞Housing Culture Award

講評

眼下に田園風景が広がる高台の平屋住宅である。この住宅では、２．５間角のかぼちゃ束の方形構造架構により、内部空間を個性的に特徴付けていることが魅力的である。また、冬の寒さ対策として、床下から温風が吹き出すパッシブな温熱空調システムの採用も効果的である。平面計画において、来客と家人の動線分離を図るための、ご夫妻の寝室を囲むように、南側の玄関ホール・広縁と北側のクローゼット・サニタリー諸室を配置したことも良い。その他の長所は、部屋からの眺望、通風・採光への配慮などあるが、最大の特徴は、ご夫妻の洗練された趣味を最大限に生かしたインテリア空間の創出にあり、この住まいならではの姿を実現化したことにある。壁面いっぱいに書籍が積み上げられた、読書家であられるご主人の書斎、奥様の趣味で収集された着物帯がタペストリーのように展示された広縁など、家人の知的な雰囲気がそれと無く感じられる日々の生活の在り様が、この住まいをして非常に魅力的かつ印象深いものにしている。