住まいの文化賞Housing Culture Award

講評

建て主は自ら住まいの設計を託す設計者の選択に、まず、相当のエネルギーを費やした。そして2年の歳月を設計にかけ、その記録は建て主によって驚くほど克明に記された。その記録は、当然のことながら建築期間中の打合せにまで及んだ。まずそこに現れた建て主の熱意と、それに応えた設計者の誠意に驚かされる。そうまでしてつくられた住まいが満足の行かぬものになるはずがない。ところがさらに驚かされるのは、そうしてつくった住まいを通して、住まいが単に形だけのものではないことが分かったという、デザインを専門とする建て主から語られたことばである。形式的な言い方をすればこの家は週末住宅である。しかしこの住まいのおかげでほとんど毎週来客を迎え、実際にはこの住まいが本拠地で、ウィークデーは働きに出ているというべき様相を呈することとなったことが、建て主が見出した形以上のものの根拠となっている。美しい里山の風景をそのまま自分の庭とするかのように建つこの住まいは極めて現代的な造形がなされているにもかかわらず、思いのほか年配者にも評判でさまざまな催しの場にも利用され、「2年で元を取った」という、建て主の一風変わったこの住まいの価値を如実に物語っている。