住まいの文化賞Housing Culture Award

講評

建て主はアレルギーで化学物質にも敏感な家族にとって、より良い環境を求め、この地に家を建てた。病院などが奨める住宅は、機械的な空気調整で外部から切り離したシェルターのような無菌室。しかし職人へのヒヤリングの結果到達したのは何も特別の装置でも工法でもなく、つい何十年か前まで至極当たり前にとられていた材料工法がアレルギー疾患に良いという結論であったと設計者は言う。そして家づくりは薬害処理されていない地元材を加工する過程を親子が自分たちの眼でしっかりと見ることから始められた。現在、国は様々な環境問題に対処すべく、環境共生住宅を推進している。しかし考えてみれば昔の家はみな環境共生住宅だったのである。この「東伊豆の家」はそのことを私たちに改めて思い起こさせてくれる。外と内とを自然な形でつなげた明るい開放的な空間は、そこに住む人の自然治癒力を引き出し、地域の人たちとのつながりをも豊かにしている。同時に地域の職人の技術を伝承することにもなった、建て主と設計者、施工者との間の綿密なコミュニケーションにもとづく健康な家族空間の創造は、まさに住まいの文化賞にふさわしい。