受賞者の声VOICE

鍋田さつき設計事務所

木の家が叶える小さくてものびやかな暮らし

 素材のもつ温もりや、年を重ねて変化していく色や質感。そんな木の家ならではの味わいや、自然の力がもたらす心地良さを感じさせてくれるのが、「ふじの家」だ。設計者は、静岡市で木の住まいづくりを専門とする「鍋田さつき設計事務所」の鍋田さつき氏。

「お施主様のご希望は『みんなが集まれる空間』『どこにいても家族の声が聞こえる間取り』。そこで、小さくてものびやかに暮らせる、居心地の良い間取りと庭づくりを考えました。」と話す。

 1階からロフトまでを吹き抜けにし、2階の大開口の窓から視界が広がるよう開放感を演出しつつ、薪を置く棚を庭に設けて目隠しに。開口部や天井の高さを工夫し家の断熱・機密性を高めたことで、1年を通じて風や太陽の温かさを感じられ、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる。さらに、キッチンから外のデッキ、勝手口、収納庫を行き止まりのない動線で繋ぎ、家族の様子や窓からの景色を眺められる設計に。収納は、家事や身支度をスムーズに行える場所に適宜分散させた。「共働きのご夫婦が、家事や子育てを効率的に行えるように」と、自身も子育てをしながら働く女性建築士らしい、細かな気配りが散りばめられている。

また、静岡県産の木材を利用することで地産地消による地域活性化の一翼を担い、薪ストーブでは間伐材や廃材を有効活用している。氏の人や環境への思いが、家づくりには生かされているのだ。

土地のもつ魅力を取り入れた五感で感じる心地良い住まいを

 鍋田氏は家づくりにおいて、まち並み、風向きや日当たり、景色などを常に意識しているという。「あらゆる土地条件を解きほぐしながら、その土地の魅力を取り入れた、五感で感じられる心地良い住まいを提案したいと考えています。」そのためには何度もその場所を訪れて、自ら感じ取っているそうだ。「今までの暮らしぶりやこれからの暮らし方など、じっくりとお話を伺い、5年後、10年後もこの家で暮らしている姿をイメージしていただきながら、その方だけの住まいを一緒に作っていけたら、と思います。」

 「木造建築は奥が深く、専門性が強く現れる」と話す鍋田氏は、独立前から木の家に携わり、長年木造建築について学んできた。その知識や経験を生かして設計した事務所兼自宅は、「第24回住まいの文化賞最優秀賞」を受賞。その反響は大きく、その受賞を知って、仕事の依頼がくることも多いという。

家づくりは工務店や職人の情熱と努力があってこそ

 「木の家づくりは、工務店や職人の皆さんの情熱と努力のおかげです。」鍋田氏はそう感謝する。100枚もの図面の中から、そこに込められた設計者の気持ちを汲んで形にし、何かあればすぐに連絡をくれ、一緒に考えながら作ってくれる。「時間をかけ、皆が努力をして出来上がる家は、空気が違います。」と、鍋田氏は微笑む。

 「静岡県住まいの文化賞」に応募するのは、「木の家に携わるたくさんの方々に対し、賞をいただくことで感謝の気持ちを示したい」という想いからだという。

第27回受賞作品について

『ふじの家』

完成年 2018年9月 規模 2階建 98.83㎡ 構造 木造
作品概要 周囲ののどかな風景や心地良い風を取り入れた、1年を通して自然の暖かさを感じられるパッシブハウス。コンパクトながら、住まい手の暮らしぶりに細部まで気を配って設計されており、家族の時間をより豊かにしている。
お施主様の声 鍋田さんの設計に対する想いに共感し、製品のような住宅でなく、丁寧に設計されて住宅を作ってもらえると感じ、依頼しようと決めました。引き渡しの時に、工務店の社長さんが、「いい家だね」と話をしていたことがとても印象に残っています。良質な木材や自然素材をふんだんに使い、風や陽射しを取り込む取りとなっているため季節が感じられ、居心地が良く、家族全員が健康的に暮らしています。子供がこの家を「大好き」と言ってくれたことが、とても嬉しいです。

鍋田さつき設計事務所

鍋田 さつき 氏
〒424-0873 静岡市清水区有東坂437-16
TEL: 054-374-7201
ホームページ:http://satsuki.site/