受賞者の声VOICE

(株)育暮家はいほーむす

古民家の魅力とともに家族の歴史と絆を再生させる

 長年住み継がれてきた古民家には、家族の歴史が詰まっている。

 藤枝を中心に営業する「株式会社育暮家ハイホームス」がリフォームを手がけた「政所の家」も、120年以上、16代以上にわたって大切に守られてきた旧家のお屋敷だ。定年退職を迎えたご夫婦と母親の3人の暮らしを、安全で暖かく、さらに子供たちに残していく住まいにしたい、との希望をもとに計画を開始した。「土間のある玄関から家族の生活スペースに至る動線の確保と、生活空間の暖かさを保つ断熱エリアをどう描くかがポイントでした。」と、代表取締役の寺坂麿氏は説明してくれた。まず、3人の寝室からトイレ・水回りへの動線を短く暖かく設計し、高齢者の住まいとしての質を向上させた。さらに、過去のリフォームにより覆われていた古材梁やすすで黒ずんだ柱を現して、この家の歴史や古民家としての魅力をよみがえらせたのだ。

 古民家のリフォームは、場合によっては家の寿命を縮める可能性もある。現場監督を務めた小板橋直記氏は、「耐震性と断熱性を確保させる難しさを、今回も痛感しました。解体を始めてから基礎部分に問題があると判明し、予定外の補強が必要になり、対応に苦慮しました。」と話す。

ライフプランに合わせた安全で健康に暮らせる住まいづくり

 育暮家ハイホームスはこのような古民家の再生やリフォーム、リノベーションを得意としており、「小さなエネルギーであたたかく暮らせる住まいづくり」の実現を目指し、なかでも、50代〜70代の方へ向けた住まいと暮らしづくりに力を入れている。年を重ねて変わってゆく暮らしの中で感じる不便や不安などをきっかけに、かつてのお客様からリフォームの依頼を受けることも多いという。

 そこで同社が提案しているのが、高齢化によるさまざま健康リスクを予知し対処する「SRYアクション(住まいのリスク予知)」による住まいづくりだ。一級建築士であり、技術コーチを務める杉村喜美雄氏は、「家の中や地域で起こりうる、様々なリスクと向き合い改善していくことで、不安を喜びに変えることができます。」と言う。「政所の家」も古民家の良さを残しつつ、断熱エリアを巧みに配置することで省エネルギーを叶え、住まい手が健康的にウェルエイジングできる家を目指して設計された。その甲斐があってか、お施主様は今回のリフォームによって、住まいを次の世代へ繋ぐための意欲が湧いたという。

未来へと住み継がれていく家を目指して

 「現代の多岐にわたる社会問題は、住まいに関係することが多いのでは。」寺坂氏は推察する。だからこそ、主催者である静岡県住宅振興協議会が掲げる、県民のより良い住生活や住文化の向上を図る、という想いに共感し、「静岡県住まいの文化賞」に応募しているという。脱炭素社会実現や、未来の子供たちへと残す家づくりに取り組み、地域から笑顔を広げていきたい、と寺坂氏は語る。社名の「育暮家」には、「家と暮らしは育てていくもの」という意味が込められており、同社の家づくりに対する想いを物語ってくれている。

第27回受賞作品について

『政所の家』

完成年 2019年9月 規模 平屋142㎡ 構造 木造
作品概要 築120年以上の古民家を、暖かく住みやすい、歴史を感じさせる空間へと再生した「政所の家」。動線や生活エリアを改修し古材梁や柱を現すことで、暮らしを快適にし、住まい手の家や家族に対する想いも新たにした。
お施主様の声 職人さんたちの丁寧な施工で、120年以上前の建物が現代生活に合う終の棲家へと、見事に生まれ変わりました。幼少期に祖父から言われた屋根瓦の葺き替えを実現できたこと、繋ぐ責任を果たせた安堵感でいっぱいです。寒い冬も暖かく、家族が過ごしやすい場所ができたことに満足しています。

(株)育暮家はいほーむす

寺坂 麿 氏
杉村 喜美雄 氏
小板橋 直記 氏
〒424-0873 藤枝市青南町2丁目8-7
TEL: 054-636-6611
ホームページ:https://hihomes.co.jp/